H.HOUSE 新旧が心地よく繋がる空間
- 伝統的な住宅の リノベーション+耐震補強 -
伝統的な様式を持った住宅の、改装+耐震補強 が完成しました。
設計のテーマは 「新旧が心地よく繋がる空間」
リタイア後の、新たな第2の人生のスタートの節目に、
とにかく気分を一新したい、とのご相談で設計監理致しました。
既存を生かしながら、いかに心地良くリフレッシュできる空間を提供できるか、
というのが、難しくもあり、だからこそ面白く取り組んだテーマでした。
改装前後の 間取り図 をページ下に掲載しています。
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新設された天袋収納の下からの全景。
高さを抑えた天袋収納や、既存の床の間の四隅の柱に絡めて作ったベンチ収納が空間を立体的にしています。
西側の壁一面を収納とし、長押・鴨居をポイントにした伝統的な意匠形式を展開して、新しい意匠としています。
中央の収納ベンチの、左側はリビング、右側はライブラリー。
リビングのくつろぎスペースを囲むように配置されたベンチ収納。ソファを沢山置かなくても様々な使い方が想像できます。
収納ベンチには、全ての面に大きな引き出しが付いています。電源付き。
西側の窓から差し込む光がカーテンを透過し、空間を明るく柔らかく照らしています。
カーテンを開ければ雑木林の庭が一面に見えます。
L型に空間を囲むベンチには、様々な役割を想像しながら設計しました。
窓際では、程よい囲まれ感を感じながら座っての読書。突出した部分では寝っ転がりながら読書やパソコン。
親戚の子供が跳んだり跳ねたり。
観葉植物を置くスペースとしてもイメージしています。
天版は無垢の集成材。暖かな空間。
カーテンを開け放てば、娘家族と共有する雑木林の庭が一面に見え、それを介して、世帯間で見守りができる。
西側サッシの一部は勝手口になっていて、実際にも日常的に行き来しているとのこと。
新設された間仕切り壁は、長押や鴨居の無い納まりを採用してモダンな要素も加え、
伝統的な要素が濃くなりすぎないようにバランスさせています。
柱には「背割り」や「貫」の痕跡がそのまま残されています。
柱に仕上げを貼って、穴を塞ぐかどうか最後まで迷いましたが、結果そのままで馴染みました。
襖を開けると仏間が残されています。
隣り合う新しい空間に馴染むよう 左官を塗り替え、畳・襖を張り替えています。
右の障子は、元々和室と縁側の間にあったものを、窓際に移設したものです。
障子は光の室をコントロールしながらも、木々の姿を映し込み、空間を満たします。
空間を引き締める建具のプロポーションとディテール。
欄間をフロストにすることで空間と気配を繋ぎます。
形式の空間からくつろぎの空間へ、皆が集まり交流できる空間へと変化を遂げています。
古いものの要素を展開しながら、違和感なく新しいものが馴染むように設計しています。
改装前の既存写真
● 間取り
既存建物では、日当たりの良い場所に、形式的な空間が配置されているところを、日々の生活の中で使え、くつろげる、遊びのある、皆が集まり交流できる空間に変えています。
敷地を分筆して建てた子世帯の家の「雑木林の庭」を共有できるように計画し、窓の位置や大きさを変更しています。
● デザイン
改装の目的が「とにかくリフレッシュ」でしたので、存分にリフレッシュして頂けるよう
「形式の空間」→「くつろぎ+交流+遊びの空間」へと、逆に振れた空間を提供しながら、格調高さは失わないように配慮。既存を生かしながら、そのボキャブラリーを展開させ、新しい意匠・空間にまで発展させようと試みています。
具体的には、伝統的な形式の住宅に特徴的な長押や鴨居を「様式」として踏襲・展開しつつ、垂れ壁や欄間を全て収納化することで、一面の壁面収納としています。
また、4本の柱で囲まれた床の間部分はベンチ収納(引き出し式)として多目的に使える実用と遊びの機能を加えています。立っても座っても寝転んでも良し。とても居心地の良い印象的な空間のスパイスになっています。
● 構造
柱を全て残していることと、鴨居や長押(既存の軸組構造にとっては恐らく多少効いていると思われる)を極力残しているのが特徴となっており、設計にとっての挑戦でもありました。大工さんの提案により、改装によって新しく必要になった長押や鴨居は、全て既存からの再利用(付け替え)でまかなうことができています。
また、今回の改装のメインの目的は「リフレッシュ」でしたので、耐震補強としては間取り変更に伴う最低減の補強+αに止めています。具体的には屋根瓦を鋼板屋根に葺き替えた他、改装部を中心に補強の耐震壁を入れ、1階のその他の範囲にも最低減の補強壁をバランス良く配置して、全体のバランスを整えています。
● 断熱
断熱は、床下断熱・天井断熱を追加し、新設窓は断熱防犯サッシとし、既存窓には障子を移設して断熱効果を高めています。
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検討CG
できあがった空間の、「和」・「洋」・「和洋」・「和モダン」のいずれにも当てはめづらい様子(様式)について、何と呼んだら良いのかまだわかりませんが、とはいえ一定の完成度を持った「何か」になっているのではないかと感じている次第です。
日本全国津々浦々に存在する、これらの伝統的な形式をもった住宅(民家)の改装は、長年やりたかったことの一つでもあります。それは、蓄積された歴史を尊重しつつ、そこに時代の変化を加え、新たなものとして蘇らせることに、デザイン分野として非常に興味が有るからです。
■ 計画概要
・所在地 :埼玉県川口市
・用途地域:第二種住居地域
・防火指定:法22条地区
・構造 :木造2階建て
・建築面積 :131.03m2
・延べ床面積 :199.55m2
・改装部床面積:60m2
・設計監理:大坪和朗建築設計事務所
・耐震設計:なまあず本舗設計室 石塚武志
・施工 :株式会社 寺本建設
■ PHOTO
・大坪和朗建築設計事務所 Kazuro Otsubo
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